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第31回 日本安全保障貿易学会 研究大会終了

   

  第31回日本安全保障貿易学会研究大会は、新型コロナウイルスの影響で2020年10月4日(日)にOnlineにて114名の参加者を得て開催された。午前の自由論題セッションは3名の方々から、午後のテーマセッションは2セッション、5名の方々から報告があった。

■午前の自由論題セッションでは3名の方々から報告があった。。

  1. @ 部谷 直亮氏から「ナゴルノカラバフ紛争におけるドローン戦に関する一考察:
    作戦・戦術・調達を中心に」のテーマで報告があった。アゼルバイジャンとアルメニアの間で戦われたナゴルノカラバフ紛争におけるドローンの戦闘・戦術・作戦・装備調達等の戦争の各レベルにおける役割を分析し、報告した。
  2. A 中野 雅之氏から「安全保障輸出管理をめぐる歴史的過程分析と将来像」と題し、ココム時代から今日に至るまでの我が国の輸出管理の変遷を振り返り、将来的な輸出管理がどういうものに変革していくべきなのかについて提言があった。
  3. B 福井 康人氏からは「核セキュリティ分野の国際法とその国内実施」と題し、核セキュリティ分野の国際法を概観し、我が国の実施体制を事例として把握した上で、制度を改善すべきところがあれば具体的な政策提案を行うという報告があった。


■午後のテーマセッションでは2件のテーマをとりあげた。

●第1セッションでは、「バイデン政権の誕生と安全保障貿易管理」をメインテーマとして2名の方々より報告があり、討論を行った。
 まず、鈴木 一人氏より、「バイデン政権とイラン核合意」として報告があった。バイデン政権の内政ファースト、反イラン勢力への配慮等ジグザグが重なる一方、イラン側は米国が一方的に離脱、一方的な制裁を行ったのであり、イランが動く筋はない、との立場を取っており難航している。今後の展開は6月に予定されているイラン大統領選挙、イスラエル総選挙、EU・日本の継続的な仲介が鍵となるとの見解を示した。

 次に佐橋 亮氏より「バイデン政権下における米中対立と経済安全保障」と題し報告があった。米中対立が進展するなか、経済・科学技術・安全保障の政策はより一体化しつつある。さらにサプライチェーンの国内回帰の重要性が重視される一方、対中強硬の姿勢は変わらないものの、中間層の厚みを増やすための外交を目指し、かつ政策のコスト・ベネフィットが問われている。新興技術・基礎技術・人権の分野に焦点を当てた輸出管理の問題に対処するが、経済制裁、対米外国投資、国内の研究開発投資など他の手段などより効率的な手段を慎重に見極める必要があるとの見解を示した。

 

●第2セッションでは「中国の輸出管理法」をメインテーマとして、中国の輸出管理法とこれに対するEU、台湾の影響等について報告があり、討論を行った。
 まず、久嶋 省一氏より「中国の輸出管理法 全体の概略と暗号規制について」として報告があった。中国の輸出管理法は2020年12月1日に施行されたが米国の諸政策に対抗するための経済安全保障政策のツールであるとの見方が強まっており、国家の安全と利益保護をうたうなど安全保障輸出管理とは異なっている。本輸出管理法の概要を解説するとともに公安部とのつながりの深い暗号規制につき問題点を検討した。
 輸出管理法の注目ポイントは再輸出と、みなし輸出規制、さらに、禁止顧客リスト、域外適用、対等条項などであり、詳細な規則類の整備動向が注目される。
暗号は商用暗号管理条例(1999年10月7日施行等が公布・施行されたが、規制基準が不明確で、製品認証試験等が公正かつ技術流出の懸念無く行われるかどうか注目されると結んだ。

 次に鶴岡 路人氏より「EU・中国関係の新展開−欧州の対中観の悪化から「開かれた戦略的自律」へ」と題し、主にEU側の対中政策手段に着目し検証する報告があった。米中の戦略的競争に対し無用な「巻き込まれ」は避けたいEUに対し、対米関係を諦めた中国にとって、欧州の重要性上昇しているが、EUに対し「懐柔」よりは「脅し」を、また、「分断」戦術をとっている。これによりEUでは対中感情の悪化が生じており、対中政策手段として、対中経済的利益の擁護等の直接のツールのほかに、中長期的ツールとしてEUにおける「戦略的自律」の強化を行っており、動向が注目されるとした。

 最後に川上 桃子氏より「米中ハイテク覇権対立下の台湾半導体産業」と題し報告があり、「二つのサブセクター(ロジックIC,メモリIC)、二つの磁場(米国と中国)」に注目しながら、台湾の半導体産業が米中ハイテク技術覇権競争の焦点となるにいたった経緯とその背景を明らかにした。TMSCは傑出した競争力を持ち、世界のハイテク産業の競争の行方を左右する存在であるがゆえに、米国によるファーウェイ封殺策の切り札とされた。また、JHICC-UMC事件などもあり、台湾は中国による技術、人材の草刈場となっていった。米国、中国という二つの磁場が台湾の半導体産業に及ぼす影響は大きく、中国の磁力は一定程度、台湾に影響を及ぼし続けるであろうと結んだ。

 今回は、自由論題セッションで3件、テーマセッションで「バイデン政権の誕生と安全保障貿易管理」、及び、「中国の輸出管理法」の二つのテーマをとりあげた。前回に引き続きオンラインでの学会開催であったが、多くの参加者を得ることができた。また報告の内容、時間配分、討論に関しても対面による大会と遜色ないほど充実したものであった。報告者、司会・討論者、参加者に改めて感謝申し上げる。
自由論題、セッションともにそれぞれ興味深いテーマが報告され、特にテーマセッションのテーマは現時点で最も関心の高いテーマであり、多くの側面からの分析が報告された。フロアからも活発な質問・意見が出され有益な研究大会であった。

2021年4月
日本安全保障貿易学会 会長  鈴木 一人

鈴木会長 挨拶

日本安全保障貿易学会 第31回 研究大会プログラム

日時:2021年 3月13日(土)
10:00〜12:00  自由論題セッション
13:00〜14:45  第1セッション
15:00〜17:00  第2セッション
大会形態:Webex meetingsによるOnline会議

■午前 自由論題セッション                                 10:00〜12:00

 (1)報告者:部谷 直亮氏(慶應義塾大学SFC研究所上席所員
      「ナゴルノカラバフ紛争におけるドローン戦に関する一考察:作戦・戦術・調達を中心に」
 (2)報告者:中野 雅之氏(安全保障貿易情報センター)
        「安全保障輸出管理をめぐる歴史的過程分析と将来像」
 (3)報告者:福井 康人氏(日本原子力研究開発機構)
        「核セキュリティ分野の国際法とその国内実施」

   司会討論者:佐藤 丙午氏(拓殖大学(貿易学会 副会長))

■テーマセッション

● 第1セッション:<バイデン政権の誕生と安全保障貿易管理>    13:00〜14:45
 (1)報告者:鈴木 一人氏(東京大学 貿易学会 会長)
       「バイデン政権とイラン核合意」
 (2)報告者:佐橋 亮氏(東京大学)
       「バイデン政権下における米中対立と経済安全保障」

  司会討論者:森 聡氏(法政大学)

● 第2セッション:<中国の輸出管理法>     15:00〜17:00
 (1)報告者:久嶋 省一氏(コニカミノルタ(株))
       「中国の輸出管理法 全体の概略と暗号規制について」

 (2)報告者:鶴岡 路人氏(慶應義塾大学)
       「EU・中国関係の新展開−欧州の対中観の悪化から「開かれた戦略的自律」へ」

  (3)報告者:川上 桃子氏(アジア経済研究所)
       「米中ハイテク覇権対立下の台湾半導体産業」

  共同司会討論者:青木 節子氏(慶應義塾大学))、
          小野 純子氏(安全保障貿易情報センター)

 

■午前 自由論題セッション


部谷 直亮氏「ナゴルノカラバフ紛争におけるドローン戦に関する一考察:作戦・戦術・調達を中心に」

 


中野 雅之氏 「安全保障輸出管理をめぐる歴史的過程分析と将来像」


福井 康人氏「核セキュリティ分野の国際法とその国内実施」

 


司会討論者:佐藤 丙午氏



● 第1セッション:<バイデン政権の誕生と安全保障貿易管理>


鈴木 一人氏「バイデン政権とイラン核合意」



佐橋 亮氏 「バイデン政権下における米中対立と経済安全保障」

 


司会討論者:森 聡氏

 

● 第2セッション:<中国の輸出管理法>


久嶋 省一氏 「中国の輸出管理法 全体の概略と暗号規制について」

 


鶴岡 路人氏 「EU・中国関係の新展開−欧州の対中観の悪化から「開かれた戦略的自律」へ」

 


川上 桃子氏 「米中ハイテク覇権対立下の台湾半導体産業」

 

 

 
共同司会討論者  青木 節子氏/小野 純子氏