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第34回 日本安全保障貿易学会 研究大会終了

   

  第34回日本安全保障貿易学会研究大会は、新型コロナウイルスの影響で2022年9月11日(日)にOnlineにて86名の参加者を得て開催された。午前の自由論題セッションは1名の方から、午後のテーマセッションは2セッションを設け報告があった。

■午前の自由論題セッションでは1名の方から報告があった。

福井 康人氏から「原子力施設に対する攻撃を如何に法的に守るか:ウクライナの教訓を踏まえて」のテーマで報告があった。
ロシアによるウクライナ侵攻時には原子力施設への攻撃も発生し、改正核物質防護条約等に示された典型的な核セキュリティ事象を超えた事象も発生した。また、被害にあった施設も原子力発電所から研究所まで幅があり、そうした差異を踏まえて、このような事象に対して既存の国際法で保護できるのか、またこのような事象に対して既存の国際法で保護できるのか、また法的欠缺が無いかにつき検討した。

■午後のテーマセッションでは2件のテーマで討論を行った。

●第1セッションでは、「対ロシア経済制裁」を取り上げた。

  1. (1) 中谷 和弘氏より「ロシアに対する経済制裁とロシアからの企業撤退をめぐる国際法上の諸課題」について報告があった。
    ロシアに対する貿易制裁と国際法の観点からは効果が限定的だとした。ロシアに対する金融制裁としては、SWIFTからロシアの金融機関を除外した等の措置を取った。金融制裁は一般的に「抜け駆け」が少なくて「効く」とされるが、FAXによる資金決済や中国のCIPSを利用しての人民元による資金決済は可能である。次に ロシアからの企業撤退とロシアによる資産接収のおそれに対し言及した。一般に撤退企業の国有化は違法とされるものの、事実上の没収となるおそれが非常に高いことが強く懸念されるとした。
  2. (2) 原田 大輔氏より「欧米の対露制裁措置の現状と効果、ロシアによるカウンター制裁について」
    ウクライナ危機に関し、前例のない規模の制裁が発動されているが、対露制裁の抜け道を封じ実効性を高めるための方策として、欧州による脱ロシアの方向性を探った。一方、ロシアによるカウンター制裁としてPLガス代金のルーブル支払い強制/サハリン2のロシア法人移管、サハリン1を含む重要プロジェクトの外資撤退阻止などの対抗措置を打ち出しており、注視する必要があるとした。
  3. (3)太田 泰彦氏からは「ロシアの半導体サプライチェーン」について報告があった。
    ロシアは半導体生産に関し、体制崩壊後にほとんどの工場が閉鎖したこともあり、IT人材は豊富だが、生産はTSMCに依存している。制裁により台湾−ロシアのサプライチェーンが遮断された。ロシアは2030年までの戦略を策定した。一方、ウクライナ戦闘でドローン開発の遅れが露呈したこともあり、米国フリーの供給力を握る中国との力関係が変化し、ロシアの弱点になると予想され、注視が必要とした。

●第2セッションでは、「経済安全保障について」を取り上げた。

  1. (1) 浅井 洋介氏から「みなし輸出管理の制度見直しについて」と題し報告があった。
    イノベーション創出と高度外国人材の受入れ促進に伴い、「みなし輸出」管理の運用が重要となるため明確化を行ったので、その概要を紹介した。管理の対象となる居住者の3類型を定義し求められる注意義務を明確化した。また、大学等における運用に対してもガイダンスを示すなど説明した。この他にe-ラーニング、アドバイザー派遣事業等に対する説明もあった。
  2. (2) 有本 真由氏より「セキュリティクリアランスについて〜米国を中心に」として
    機密情報の扱いに関しセキュリティクリアランスについて米国での例を紹介した。人に対するクリアランス、施設クリアランスがあるが、人クリアランスに関し検討した。目的は当該個人の忠誠心、性格、信頼性、信用性を「秘」「極秘」「機密」の3段階で判断し、更に身元調査も実施する。調査は「国家安全保障裁定ガイドライン」にそって審査され、定期的な再審査が行われる。
  3. (3) 吉岡(小林) 徹氏からは「秘密特許制度の実証分析からの知見」と題して報告があった。
    日本では今年5月に公布され、「公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」が指定される。先行している米国の例を分析した。非軍需企業においては、技術分野の発展を阻害している傾向がある。一方、軍需産業への影響は限定的である。また、経済安全保障への効果としては仮に他国と競合関係にある場合は、かえって自国の不利を招き得るとした。一方、秘密特許は日本での対応の影響はほぼないものの、機微技術に関する出願を事前に避ける(=安全保障貿易管理を適切に行う)ことは重要とした。

■ 閉会挨拶(佐藤副会長)

 今回も充実した内容であった。現在日本が直面する安全保障管理・経済保障管理に対し、網羅的にカバーでき、また夫々の分野の第一人者に報告を頂いた。これら問題提起された事柄は今後深く議論すべきものと思う。次回研究大会は可能であれば対面で、またOnlineのメリットも考慮しながら開催してゆきたい。

2022年9月
日本安全保障貿易学会 会長  鈴木 一人

 
佐藤副会長

日本安全保障貿易学会 会長  鈴木 一人

日本安全保障貿易学会 第34回 研究大会プログラム

日時:2022年 9月11日(日)
11:00〜12:00 自由論題セッション
(12:40〜13:00 第18回総会)
13:00〜14:45 第1セッション
15:00〜17:00 第2セッション
大会形態:Webex meetingsによるOnline会議

■午前 自由論題セッション                                 11:00〜12:00

報告者:福井 康人氏 (日本原子力研究開発機構日本原子力研究所 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター)
「原子力施設に対する攻撃を如何に法的に守るか:ウクライナの教訓を踏まえて」

司会討論者:高野 順一氏(日本輸出管理研究所(当学会 副会長))


■テーマセッション

● 第1セッション:<対ロシア経済制裁>   13:00〜14:45
(1)中谷 和弘 氏(東京大学大学院):学会理事
   「ロシアに対する経済制裁とロシアからの企業撤退をめぐる国際法上の諸課題」
(2)原田 大輔 氏:JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
  「欧米の対露制裁措置の現状と効果、ロシアによるカウンター制裁について」
(3) 太田 泰彦氏(日経新聞編集委員)
   「ロシアの半導体サプライチェーン」

  司会討論者:鈴木 一人氏(東京大学(当学会 会長) )

● 第2セッション:<経済安全保障について>  15:00〜17:00
(1)報告者:浅井 洋介氏(経済産業省 安保管理課 課長)
  「みなし輸出管理の制度見直しについて」
(2)報告者:有本 真由氏(アレシア国際法律事務所)
  「セキュリティクリアランスについて〜米国を中心に」
(3)報告者:吉岡(小林) 徹氏(一橋大学イノベーション研究センター)
  「秘密特許制度の実証分析からの知見」

  司会討論者:森本 正崇氏(慶應義塾大学(当学会 理事))


 

■午前 自由論題セッション


福井 康人氏 「原子力施設に対する攻撃を如何に法的に守るか:ウクライナの教訓を踏まえて」

 

 
司会討論者:高野 順一氏


● 第1セッション:<対ロシア経済制裁>


中谷 和弘氏「ロシアに対する経済制裁とロシアからの企業撤退をめぐる国際法上の諸課題」

 


原田 大輔氏「欧米の対露制裁措置の現状と効果、ロシアによるカウンター制裁について」

 


太田 泰彦氏 「ロシアの半導体サプライチェーン」

 

   
         司会討論者:鈴木 一人氏         

 

●第2セッション:<経済安全保障について>


浅井 洋介氏 「みなし輸出管理の制度見直しについて」



有本 真由氏「セキュリティクリアランスについて〜米国を中心に」

 

 

吉岡(小林) 徹氏 「秘密特許制度の実証分析からの知見」

 

 


司会討論者:森本 正崇氏